ビールの種類はどれくらいある?主なビアスタイルとおすすめの選び方

ビールの種類

「とりあえずビール!」は、お酒の席で使われる常套句。
おなじみの味が乾いた喉を潤すと、何物にも代え難い幸福感が広がります。
しかし、ビールの楽しみ方はそれだけではありません。

日本の居酒屋などで多く扱っている大手メーカーのビールは、数あるビールのうち「ピルスナー」に属するものがほとんどですが、ビールの味わいや相性の良い料理は、ビールの種類やビアスタイルによって異なります。
最近は、味に個性を持たせたクラフトビールが増えて、選ぶ楽しみが広がりました。

たくさんのビールの中から自分に合うものを探すには、それぞれのビールの特徴を知ることが大切です。
ここでは、ビールの代表的な種類とビアスタイル、おすすめの選び方について、ビールライターの富江弘幸さんに教えていただきました。

監修

ビールライター・富江弘幸

富江弘幸
ビールライター/ビアソムリエ

大学卒業後、出版社・編集プロダクションでライター・編集者として雑誌・書籍の制作に携わる。その後、中国留学を経て、英字新聞社ジャパンタイムズに勤務。
現在はWeb、紙メディアを問わず、さまざまな媒体で記事を執筆するほか、日本ビアジャーナリスト協会のビアジャーナリストアカデミー講師も務める。
著書に「教養としてのビール 知的遊戯として楽しむためのガイドブック」(SBクリエイティブ)、「BEER CALENDAR」(ステレオサウンド)など。
X:@hiroyukitomie

ビールはラガーとエールに大別される

まず、ビールはその発酵方法によって、大きく2つの種類に分けることができます。
それが「ラガー」と「エール」です。

それぞれについて詳しくご紹介します。

ラガー

ラガーは、下面発酵酵母(ラガー酵母)を使い、10℃前後の温度で発酵させ、1ヵ月程度熟成させたもの。
よく冷やしてごくごく飲むのに適しており、一定の品質を保ちやすいため、大手ビールメーカーの多くが採用しています。

エール

エールは、上面発酵酵母(エール酵母)を使い、20℃前後の温度で発酵させ、2週間程度熟成させたもの。
冷やしすぎず、深い味わいと華やかな香りをゆったりと楽しむビールです。

ラガーとエール、それぞれに属するビールは、麦芽やホップの組み合わせによって香りや苦味などの味わいに違いが生まれ、さらに150種類以上の「ビアスタイル」に細分化されます。

続いては、ラガーとエールのそれぞれに属する代表的なビアスタイルごとに、特徴をご紹介します。

ラガーに含まれる代表的なビアスタイル

ラガーの代表的なビアスタイルは、「ピルスナー」「デュンケル」「シュヴァルツ」の3つです。

ピルスナー

苦味:★★★☆☆
甘味:★★☆☆☆
香り:★★☆☆☆

ピルスナーは、よく冷やして、キレの良い喉ごしと爽快感を楽しむビアスタイル。
夏の暑い日に乾いた喉を潤すのにもぴったりです。

日常的によく見かけるキリンの「一番搾り」、アサヒビールの「アサヒスーパードライ」、サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」、サッポロビールの「サッポロ生ビール黒ラベル」などが該当します。

デュンケル

苦味:★★★☆☆
甘味:★★★☆☆
香り:★★☆☆☆

ドイツ発祥で、日本では1990年代後半の地ビールブームの頃によく見られたデュンケル。
色はこげ茶で、カラメルのような香ばしさとほろ苦さがあります。

複数のビアスタイルのビールを飲むときは、味の違いを感じるために薄味のビールから飲んでいくのがコツですが、デュンケルは中間あたりで飲むのにも適しています。

シュヴァルツ

苦味:★★☆☆☆
甘味:★★☆☆☆
香り:★★☆☆☆

ドシュヴァルツは、ドイツのバイエルン地方で生まれ、長く親しまれてきた黒ビールです。
コクが深いイメージの黒ビールの中でもすっきりとした味わいで、黒ビール初心者の人でも飲みやすいと思います。

黒ビール

エールに含まれる代表的なビアスタイル

続いて、エールに含まれる代表的なビアスタイルについて、日本でよく見かけるものを中心にご紹介します。

ペールエール

苦味:★★★☆☆
甘味:★★★☆☆
香り:★★★☆☆

ペールエールは、「エールの基本」ともいえるビアスタイル。
香りも味も、アルコール度数も、強すぎず弱すぎず平均的で、どんな料理とも相性が良いです。

食卓のお供として活躍してくれますよ。

IPA(インディアペールエール)

苦味:★★★★★
甘味:★★★☆☆
香り:★★★★★

IPA(インディアペールエール)は「インディア」の名がついていますが、生まれはイギリスです。

大航海時代、イギリスの植民地だったインドへビールを運ぶため、抗菌作用のあるホップを大量に使い、アルコール度数の高いビールが造られました。
これがIPAの起源であり、名前の由来だといわれています。

IPAは、ビールに香りと苦味をもたらすホップを大量に使っているため、強烈な苦味と華やかな香りが特徴。
その強烈な苦味が受け入れられ、現在では世界中でIPAが造られており、絶大な支持を得ています。

よりアルコール度数が高めの「ダブルIPA」や、フルーティで濁った色合いが特徴的な「ヘイジーIPA」などの派生ビアスタイルが多く、IPAの中で好みの味を探すのも楽しいですよ。

ヴェイツェン

苦味:★☆☆☆☆
甘味:★★★☆☆
香り:★★★★☆

ヴェイツェンは、ドイツ南部のバイエルン地方で生まれた、白ビールの代表選手。

バナナのようなフルーティな香りとほのかな酸味で、ビール特有の苦味が苦手な人や女性にも人気です。

白ビール

ベルジャンホワイト

苦味:★☆☆☆☆
甘味:★★★☆☆
香り:★★★★☆

ベルジャンホワイトは、ベルギー発祥の白ビールです。

副原料としてオレンジピールとコリアンダーを使っているため、柑橘系のフルーティな香りと、コリアンダー由来のスパイス系の香りが同時に立ちのぼります。

苦味は控えめで、優しい味わいが魅力。

ポーター

苦味:★★☆☆☆
甘味:★★★☆☆
香り:★★★☆☆

ポーターは黒ビールですが、シュヴァルツよりも少し香りが強めなものが多いビアスタイルです。
コーヒーを思わせる香りとコクのある味でしっかり飲み応えがありつつも、そこまで重さは感じません。

スタウト

苦味:★★★☆☆
甘味:★★★☆☆
香り:★★★☆☆

スタウトは、ポーターよりもロースト感の強い黒ビールです。

スタウトには「強い」の意味があり、その名のとおり、色や風味、味が濃く存在感があります。
アルコール度数も高めです。

セゾン

苦味:★★★☆☆
甘味:★★☆☆☆
香り:★★★☆☆

セゾンは、ベルギー南部で古くから親しまれているビアスタイルです。

元々は、農家が冬に仕込み、暑い夏の農作業中に水代わりに飲んでいた自家用ビールでした。
かつてのセゾンの味わいは家庭によってさまざまでしたが、現在造られているセゾンは、ホップがきいていて苦味があるというのが共通した特徴です。

現在は、タイプの異なるセゾンが一年を通じて醸造されています。
日本でも、セゾンを造っている醸造所がありますよ。

アルト

苦味:★★☆☆☆
甘味:★★★☆☆
香り:★★★☆☆

アルトには、「古い」という意味があります。
実際、ラガーは比較的新しいビアスタイルですが、アルトは古くからドイツのデュッセルドルフで飲まれていました。

ホップの香りが華やかで、カラメルに似たほのかな甘さが感じられます。

ケルシュ

苦味:★★☆☆☆
甘味:★★☆☆☆
香り:★★☆☆☆

ドイツのケルン地方で造られているケルシュは、高めの温度で発酵させるエール酵母を低温で発酵・熟成させるため、フルーティで、ピルスナーに近いすっきりした味わい。

どんな食事にも合わせやすいエールです。

ビールの種類(ビアスタイル)別味わいチャート

ビールの種類(ビアスタイル)別味わいチャート

黒ビールと白ビールの違いは?

ビールの色の違いは、使用する麦芽の種類によるもの。

黒ビールは、麦芽を焙煎しているため、色が濃くなります。
ローストの風味が強く、深いコクが特徴的です。

白ビールは、一般的なビールに使われる大麦麦芽よりたんぱく質を多く含む小麦や小麦麦芽を使っているため、白濁した見た目になります。

まろやかで酸味があり、飲み口は軽め。苦味が少ないため、飲みやすいと感じる人が多いでしょう。

黒ビールと白ビールの特徴

味の特徴 代表的なビアスタイル
黒ビール ローストの風味が強く、コクが深い ポーター
スタウト
シュヴァルツ
白ビール まろやかで軽い飲み口
苦味は少ない
ヴァイツェン
ベルジャンホワイト

よりマニアックにビールを楽しむなら、自然発酵ビールもおすすめ

自然発酵ビールは、空気中に存在する天然酵母を使って自然発酵させたものです。
強烈な酸味が特徴で、一般的なビールを想像して飲むと衝撃を受けるかもしれません。

その強烈な酸味の虜になってしまう人も多いのですが、苦手な人はフルーツを加えて酸味を抑えたフルーツビールを試してみるのもいいでしょう。

ベルギー伝統の発酵方法ですが、日本でも造られています。

自分に合うビール、食事に合うビールの選び方

種類が多すぎて、どのビールを選べばいいかわからない…と思ったら、味わいや、ビールといっしょに食べる料理を軸に選ぶのがおすすめです。

好きな味わいで選ぶ

各ビールの味わいの特徴を参考に、自分の好みに近いものを選びましょう。

甘いものが好きなら、バナナの香りがするものやカラメルの風味があるもの、ガツンとくる味が好きならアルコール度数高めで風味が濃いものなどを選ぶといいでしょう。

料理に合わせて選ぶ

料理に合わせたビール

ビールといっしょに食事をする場合は、お互いに引き立て合えるビールを選んでみてください。

基本的には、色の濃い料理ならビールの色も濃いものを、色の薄い料理なら色の薄いビールを合わせると失敗しにくいです。
ドイツでは、白ビールのヴァイツェンと白ウインナーの組み合わせが定番だそうです。

ビールの種類はさまざま!好きなビアスタイルを見つけよう

ビールの種類は多く、一つひとつに特徴があります。
最近はデザインにこだわったものも多いので、まずはラベル買いからスタートしてみてもいいかもしれません。

めいぶつチョイスでは、日本各地で造られているこだわりのクラフトビールがそろっています。
ここでご紹介したビールの種類、各種ビアスタイルの特徴も参考にして、ぜひお気に入りを見つけてみてください!