かつおの旬は年2回!旬ごとの味わいやおいしい食べ方を専門家が解説

かつおのたたき

かつおは、日本の食文化に深く根差した魚です。
縄文時代にはすでに食べられていたといわれ、「勝魚」の当て字から縁起のいい魚として重宝されてきました。
1年のうちに旬が2回あり、楽しめる時期が多いのも魅力のひとつです。

今回は、パパ料理研究家であり、産経新聞社とともに魚食を推進する「パパさかな大使」プロジェクトを展開する滝村雅晴さんに、かつおの旬ごとの味わいの違いや栄養素、おいしく食べるコツなどを教えていただきました。

監修

滝村雅晴

滝村雅晴
パパ料理研究家/株式会社ビストロパパ代表取締役/大正大学客員教授/パパさかな大使代表

料理を通して家族の食育・共食と健康作りを推進。全国で料理教室の講師や講演も行う。NHK「あさイチ」「きょうの料理」、日テレ「キューピー3分クッキング」などに出演。毎週YouTube「ビストロパパCHANNEL」にて料理動画を公開。わかりやすく見やすいオンライン料理教室が人気。農林水産省 食育推進会議 専門委員を10年歴任。

株式会社ビストロパパ

かつおの旬は春と秋の2回

かつおの旬は1年に2回あります。
かつおが南から黒潮に乗って北上する春と、産卵のために暖かい海を目指して南下する秋に旬を迎え、さまざまな地域で水揚げされます。
農林水産省が公表している「令和5年漁業・養殖業生産統計」によると、2023年に最もかつおの漁獲量が多かったのは静岡県で、東京都や宮崎県、宮城県、高知県などでも多く水揚げされていました。

かつおの味わいは旬によって大きく変わります。
春と秋、それぞれの旬の特徴をご紹介します。

初がつお(春のかつお)と戻りがつお(秋のかつお)の移動の様子

春のかつお(初がつお)

春のかつおは、その年に初めて水揚げされることから「初がつお」と呼ばれます。
黒潮に乗って北上するかつおが、黒潮と親潮のぶつかる三陸沖を目指す途中で捕獲されるため、引き締まった身と脂の少なさが特徴です。
さっぱりとした口あたりながらも、しっかりとした旨みを楽しめます。

秋のかつお(戻りがつお)

秋のかつおは、産卵のために北から南へと太平洋沿岸を戻る途中で水揚げされるため、「戻りがつお」と呼ばれます。
エサをたっぷりと食べて丸々と太った戻りがつおは、脂が乗っていて味わいは濃厚。
旨みが強く、食べごたえがあります。

かつおは部位によって味わいが異なる

かつおの全身

かつおは、体長が50cm前後であることが多く、最大で100cmに達するといわれるほど大きな魚です。
そのため、丸ごと販売されていることは少なく、通常は背中側にあたる「背側」とお腹側にあたる「腹側」に分けて販売されます。

初がつおと戻りがつおの味わいが違うように、同じ時期に獲れた一尾のかつおでも、背側と腹側では次のように味わいが異なります。

背側

背側は腹側に比べると脂身が少なく、赤身のしっかりとした味わいを楽しめます。
かつおそのものの風味や香りを感じたい方や、さっぱりとした味わいが好きな方には、初がつおの背側がおすすめです。

腹側

腹側は、脂が乗っていて濃厚な味わい。脂の乗り具合によっては、とろけるような食感が楽しめることもあります。
腹側の柵(刺身にしやすい大きさに切り分けた身)は、内臓を取り除いた部分が丸くカーブしています。
脂の乗ったかつおが好きな方は、戻りがつおの腹側をぜひ試してみてください。

かつおは栄養も豊富!

かつおの魅力は、味わいだけではありません。
ヘルシーな魚類の中でも、高たんぱくで低脂質。良質な脂であるEPAやDHAもたっぷり含まれています。
ここでは、かつおに含まれる代表的な栄養素を見ていきます。

たんぱく質

たんぱく質は、肌や髪、臓器など、体のさまざまな組織を作るのに欠かせない栄養素。
生のかつおの可食部100gに含まれるたんぱく質は、初がつおで25.8g、戻りがつおで25gほどです。

たんぱく質の1日の摂取推奨量は、18~64歳の男性で65g、18歳以上の女性で50g(※1)です。
つまり、生のかつおを100g食べれば、男性なら1日の推奨量の約6割、女性なら約5割が摂れることになります。

EPA、DHA

EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、魚介類に多く含まれるオメガ3脂肪酸です。
体内で生成できない必須脂肪酸で、血栓や高血圧を予防したり、脳の発達を促進したり、認知症を予防したりといったさまざまな効果が期待できます。

生の戻りがつおの可食部100gあたりには、DHAが970mg、EPAが400mg(※2)含まれています。
オメガ3脂肪酸の1日の摂取目安量は、成人男性で2,200~2,300mg、成人女性で1,700~2,000mg(※1)です。
そのため、生の戻りがつおを100g食べるだけで、1日の摂取目安量の半分以上を摂れることになります。

なお、初がつおに含まれるEPAとDHAの量は、戻りがつおの10分の1程度である点には注意が必要です。

鉄分

貧血予防に効果的な鉄分のうち、かつおなど動物性食品に含まれる鉄分を「ヘム鉄」といい、身体に吸収されやすいという特徴があります。

1日の鉄の摂取推奨量は、18~64歳の男性で7.0~7.5mg、18~64歳の女性(月経あり)で10.0~10.5mg(※1)です。
生の初がつお、戻りがつおともに、可食部100gあたり1.9mgの鉄分を含むため、男性なら推奨量の3割弱、女性なら2割弱が摂れることになります。

※栄養素については、厚生労働省と文部科学省のデータをもとに編集部が作成
※1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)
※2 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

かつおを上手に食卓に取り入れる方法

かつおの刺身

かつおの鮮度や栄養を保ちながら、上手に食卓に取り入れるためのポイントをご紹介します。

柵を購入して食べる直前に切る

かつおは鮮度が落ちやすく、切ったそばから酸化して傷んでしまいます。
刺身で食べる場合、鮮度を保つために柵を購入し、食べる直前に切り分けるのがおすすめです。

回遊魚であるかつおには、酸素を蓄えて持久力を保つ働きがある色素たんぱく質の「ミオグロビン」が多く含まれており、新鮮なかつおの切り口は鮮やかな赤色をしています。
鮮度が落ちるにつれて黒ずんでいくため、鮮度を判断する際の参考にしてみてください。

かつお節やかつおのツナ缶を使う

かつお節やかつおのツナ缶を使えば、かつおをより手軽に食卓に取り入れられます。

かつお節は出汁を取るときに使うイメージが強いですが、炒め物などに調味料として加えるものおすすめ。
旨み成分のイノシン酸によって食材のおいしさが引き立ちます。
味噌汁に使う際は、出汁を取ったあとにかつお節を捨てず、そのまま味噌汁の具材として加えることで、無駄なくおいしい味噌汁が楽しめます。

また、手軽に使えるツナ缶もおすすめ。
ツナ缶にはマグロが使われているイメージがありますが、世界的に見るとマグロではなくかつおが主流です。
ストックしておいて、サラダやサンドイッチなどに使ってみてください。

料理研究家がおすすめする、かつおのおいしい食べ方

かつおは、刺身やたたきのほかにもおいしい食べ方があります。
滝村さんに、手軽に実践できるおいしい食べ方を教えていただきました。

薬味をたっぷり乗せたかつおの和風サラダ

かつおに薬味をたっぷり乗せて、和風サラダのようにしていただくのがおすすめです。
薬味は青じそやスライスして水にさらした長ネギ、玉ねぎのスライスなどをたっぷりと乗せてください。
味付けは、ポン酢や酢醤油などがよく合います。

使うかつおは刺身でも、たたきでも構いません。
かつおの独特の風味が苦手な方や、脂の濃さをやわらげたい方にもおすすめの食べ方です。

かつおの漬け

買ってから時間が経ち、少し鮮度が落ちてしまったかつおの刺身は、漬けにするとおいしくいただけます。

かつおの漬けの作り方(1~2人分)

1. 酒とみりん各大さじ1を小鍋に入れ、火にかけてアルコールを飛ばします。
2. 醤油大さじ1を加えて混ぜ合わせ、火を止めて粗熱を取ります。
3. 粗熱が取れたら、かつおの刺身約150gを30分ほど漬けます。

漬ける時間が長いほど食感がねっとりし、味も濃厚になります。
アレンジとして、かつおの漬けをご飯に乗せ、すりおろした山芋をかけて山かけ丼にするのもおすすめです。

なお、おいしいかつおの漬けを作るには、かつお本来の味を妨げない調味料を使うのがコツです。
できれば、食塩や添加物が入っていない日本酒や、コクと芳醇な香りがある本みりんを使ってみてください。

栄養豊富で使い勝手の良いかつおを、もっと身近に!

おいしくて栄養豊富なかつおは、旬の時期に新鮮な刺身やたたきとして食べるのはもちろん、手軽なかつお節やツナ缶などで食卓に取り入れるのもおすすめです。
特に、かつお節は出汁だけでなく料理の具材としても使えて、長期間保存できるため、ぜひストックしておいてください。

地域の特産品を扱うめいぶつチョイスでは、こだわりのかつおを生産者から直接お届けします。
ぜひおいしいかつおを取り寄せて、毎日の食卓に取り入れてみてください!