ジビエとは食用の野生鳥獣肉のこと
ジビエ(gibier)はフランス語で、食肉用に捕獲された野生鳥獣の肉のこと。
牛肉や豚肉、鶏肉など家畜動物の肉とは異なり、狩猟で捕獲される野生鳥獣の肉であるジビエは、供給が不安定です。
かつては狩猟を娯楽とする貴族階級によって食べられていたため、フランスをはじめとする欧米諸国では高級食材として扱われていました。
主なジビエには、鹿肉やイノシシ肉、クマ肉、カモ肉、キジ肉、ウサギ肉などがあります。
ただし、日本国内で捕獲され、身近なお店や家庭で一般的に食べられているのは鹿肉とイノシシ肉です。
日本におけるジビエの歴史
日本では、生き物の命を奪うことを禁ずる仏教との折り合いの悪さなどから、ジビエは長らく普及しませんでした。
実際には、弥生時代から鹿肉は食べられており、飛鳥時代に肉食禁止令が出た後も、鹿肉は「もみじ」、イノシシ肉は「ボタン」といった隠語で呼ばれながら、狩猟肉を食べる文化は日本に根づいていました。しかし、戦中・戦後の混乱期に鹿が乱獲され、絶滅の危機に瀕したため、法律で鹿の狩猟が禁じられたのです。
その後、高度経済成長期に入ると、日本では牛肉や豚肉、鶏肉を食べることが一般的になり、狩猟肉を食べる文化は次第に失われました。
また、鹿の天敵であったオオカミが絶滅し、狩猟者の減少や地球温暖化の影響もあり、越冬できる鹿が増加。
さらに、過疎化によって耕作放棄地が広がり、鹿が農作物を餌にできる環境が整ったことが重なって、1980年以降、鹿の生息数は爆発的に増加しました。
最近になってジビエ文化に注目が集まっている背景には、野生鳥獣による農作物被害の増加があります。
農林水産省の「捕獲⿃獣のジビエ利⽤を巡る最近の状況(令和6年9⽉)」によると、2022年度の野生鳥獣による農作物の被害額は156億円で、そのうちの約7割がシカ、イノシシ、サルによるものでした。
農作物が繰り返し被害に遭えば、農業を続けられない人が増え、地域の衰退にもつながりかねません。
そこで、野生動物を捕獲して農作物を守りつつ、農山村の活性化につなげる取り組みとしてジビエの利用が推奨されるようになりました。
ジビエの味わいや栄養価は?
「ジビエはおいしい」「体にいい」と聞いても、味にクセがありそうで購入をためらっている人もいるのではないでしょうか。
欧米諸国では、長期間熟成させた濃厚な味わいのジビエが出回っていますが、日本ではジビエの鮮度を保つ仕留め方や処理方法が徹底されており、思いのほかクセがありません。
狩猟時期や産地、加工方法にもよりますが、質のいいジビエを選べばにおいやクセが少なく、みずみずしくフレッシュな肉を味わえます。
また、日本で多く流通している鹿肉やイノシシ肉は、牛肉や豚肉に比べて栄養価が高いのも特徴です。
ここからは、鹿肉とイノシシ肉の味わいと栄養価をご紹介します。
鹿肉
新鮮な鹿肉は、切り口から水がはじけ飛ぶようなみずみずしさが特徴です。脂身が少なく淡白な味わいながら、赤身の肉ならではの旨みがあります。
日本で主に流通しているのは、エゾシカとホンシュウジカの2種類です。
エゾシカは味や肉質に野性味があり、ホンシュウジカより脂が乗っていて、肉の繊維も粗めです。ホンシュウジカはあっさりしていて食べやすく、きめ細かく繊細な肉質を楽しめます。
また、鹿肉は牛肉に比べて高たんぱく・低脂質で、栄養価も高いので、筋トレやダイエット、美容にもおすすめの食材です。
鹿肉と牛肉の栄養価は下表のとおり。
鹿肉と牛肉の栄養価の比較(可食部100gあたり)
エネルギー (kcal) |
たんぱく質 (g) |
脂質 (g) |
鉄 (mg) |
ビタミンB1 (mg) |
ビタミンB2 (mg) |
ビタミンB6 (mg) |
ビタミンB12 (μg) |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
鹿肉 (※1) |
119 | 23.9 | 4.0 | 3.9 | 0.20 | 0.35 | 0.6 | 1.3 |
牛肉 (※2) |
294 | 17.1 | 25.8 | 2.0 | 0.07 | 0.17 | 0.35 | 1.4 |
鹿肉に豊富な栄養成分としては、下記が挙げられます。
たんぱく質
たんぱく質は、筋肉や皮膚、髪など、体のあらゆる組織を作り、免疫や代謝を上げる役割を果たします。
鹿肉はたんぱく質が豊富で脂質が少ないので、必要な筋肉量を維持しながら美しい体づくりをしたい方にぴったりの食材です。
鉄分
鉄分は、集中力の低下や頭痛、食欲不振などの原因になる鉄欠乏性貧血を予防します。
鹿肉には、牛肉と比べて鉄分が2倍近くも含まれています。
ビタミン類
ビタミン類は、三大栄養素である糖質・脂質・たんぱく質の代謝をスムーズに進める働きをする栄養素です。
鹿肉には、食事でとった糖質からエネルギーを作り出すのを補助するビタミンB1が、牛肉と比べて3倍近くも含まれています。
また、糖質、脂質、タンパク質のエネルギー代謝や脂質代謝を補助するビタミンB2も、牛肉の2倍以上含まれます。
鹿肉については、下記の記事で詳しくご紹介しています。
鹿肉の特徴は?栄養価やおすすめの部位、おいしい食べ方を解説
鹿肉は、近年注目を集めているジビエの一種です。身近なレストランや居酒屋などでも見かけるようになりましたが、「クセがありそう」と敬遠している人もいるかもしれません。
イノシシ肉
イノシシは豚の先祖で、その肉は豚肉に似た味わいです。しかし、イノシシは山のどんぐりや果実、山菜などをたっぷり食べ、しっかり運動しているため、豚肉よりもコクや旨味があるのが特徴です。
赤身は濃厚でクセがなく、肉本来の弾力と甘味を楽しむことができます。
イノシシ肉の一番の魅力は脂身。調理するとやわらかく口の中でとろけるような食感になり、甘味が感じられます。イノシシが冬の寒さから身体を守るため蓄えた脂身は、脂身というよりも白い肉といえるくらい、しつこさを感じさせません。また、豚肉の脂身と違って、冷めても甘くておいしいのが特徴です。
また、イノシシ肉は栄養面でも優れています。
イノシシ肉と豚肉の栄養価の比較は下記のとおりです。
イノシシ肉と豚肉の栄養価の比較(可食部100gあたり)
エネルギー (kcal) |
たんぱく質 (g) |
脂質 (g) |
鉄 (mg) |
ビタミンB1 (mg) |
ビタミンB2 (mg) |
ビタミンB6 (mg) |
ビタミンB12 (μg) |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
イノシシ肉 (※1) |
249 | 18.8 | 19.8 | 2.5 | 0.24 | 0.29 | 0.35 | 1.7 |
豚肉 (※2) |
237 | 17.1 | 19.2 | 0.6 | 0.63 | 0.23 | 0.28 | 0.5 |
イノシシ肉は、たんぱく質や脂質の含有量は豚肉とほとんど変わりませんが、鉄分が豚肉の約4倍、ビタミンB12が豚肉の3倍以上も含まれています。
豚肉のような食べごたえがありつつ、栄養価が高いのがイノシシ肉の魅力です。
おすすめのジビエ調理法は?
ジビエはさまざまな方法で調理されており、料理のジャンルも多様です。
新鮮なジビエが手に入ったら、濃い味付けをせず、シンプルな味付けと調理方法で肉そのものの旨味を楽しんでください。
購入したジビエをハーブなどといっしょにオリーブオイルやグレープシードオイルに漬け込んでから焼くと、乾燥を防ぎながら色よく焼き上げることができます。
鹿肉は、サイコロステーキにするのがおすすめです。角切りにしてフライパンで焼き、中心部は予熱で火を入れるようにすると、柔らかいステーキに仕上がります。
イノシシ肉はカツや生姜焼きのほか、味噌漬けにするとおいしく食べられます。焼肉にして塩とレモンでさっぱり食べるのもおすすめです。いずれも豚肉と同じレシピで調理が可能です。
ほかにも、よく知られているぼたん鍋やしゃぶしゃぶなどにしてもおいしくいただけます。
上質なジビエを見つけて、日本ならではのジビエのおいしさを知ろう!
栄養豊富で味わい深いジビエは、普段の食生活にぜひ取り入れたい食材です。
おいしいジビエを選ぶためには、信頼できるオンラインショップや店舗で購入することをおすすめします。
丁寧に加工された質のいいジビエを手に入れて、牛肉や豚肉、鶏肉とは一味違うおいしさを存分に楽しんでください。
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