味噌の種類とその特徴は?原料や味、色による違いを紹介

味噌の種類

日本人の食生活に欠かせない味噌は、健康にいい発酵食品として、近年あらためて注目を集めています。

全国各地で作られている味噌の種類や味は多種多様。
ですが、あまりにも身近な存在のため、反対に味噌についてよく知らない人も多いのでは?

ここでは、原料や味、色による違いといった味噌についての基礎知識から、味噌のおすすめの選び方まで、みそ探訪家の岩木みさきさんにお話を伺いました。

監修

岩木みさき

岩木みさき
みそ探訪家/実践料理研究家

10代の頃に体調不良に悩み、食生活を見直して症状が改善されたことから食に興味を持ち、栄養の道を志す。短期大学を卒業後、栄養士の委託会社に就職して3年間病院に勤務し、独立。味噌に魅せられて全国各地の味噌蔵を探訪するほか、レシピ開発やセミナー登壇、料理教室「misa-kitchen」を主宰する。
著書に『みその教科書』(エクスナレッジ)、『野菜玉レシピ』(OAK MOOK)など。2024年6月に新刊『にっぽん味噌蔵めぐり』(東海教育研究所)を発売。

岩木みさき オフィシャルサイト

味噌の種類は大きく4種類ある

味噌とは、大豆・麹・塩を主原料とし、発酵・熟成させて作られる調味料です。

味噌の種類は大きく分けて次の4種類がありますが、基本的にすべての味噌は大豆を使って作られていて、使用する麹の種類によって分類されます。

米味噌

米味噌

白米や玄米からできる「米麹」を使った米味噌。
国内で生産されている味噌の8割が米味噌です。
味や色も種類が豊富で、京都の西京味噌に代表される白味噌も米味噌の一種。

麦味噌

麦味噌

大麦や裸麦からできる「麦麹」を使った麦味噌。
やや甘めで、麦特有の香りがあるのが特徴です。
主に九州地方や瀬戸内地方でよく作られています。

豆味噌

豆味噌

大豆からできる「豆麹」を使った豆味噌。
熟成期間が長く、コクと深みのある味わいで、煮込み料理との相性が抜群です。
豆味噌は愛知県、三重県、岐阜県の東海3県で作られていて、愛知県の八丁味噌が有名。

調合味噌

調合味噌は、数種類の味噌を合わせたもので、「合わせ味噌」ともいわれます。
米と麦、麦と豆など、異なる種類を調合するだけでなく、異なる米味噌同士を調合したり、2種類以上の味噌を混ぜたりしても調合味噌になります。

甘味噌・甘口味噌・辛口味噌…味噌の味の違いって?

味噌の味は、一般的に「甘味噌」「甘口味噌」「辛口味噌」の3種類に分類されています。
味噌の味わいは大豆に対する塩と麹のバランスで変わり、塩の量が多くなれば辛口味噌に、麹の量が多くなれば甘味噌や甘口味噌になります。

分類の目安となるのは塩分濃度です。

味噌の味の違い

塩分濃度 特徴
甘味噌 5%以上7%未満 関西地方のお雑煮にも使われる白味噌が含まれる
甘口味噌 7%以上11%未満 流通している味噌の多くがこの範囲に収まる
辛口味噌 11%以上13%未満 東北や北海道など、主に北の地域で作られる

この分類では甘口味噌の幅が広く、甘めのものから甘じょっぱいものまでが一括りになっているため、岩木さん独自の定義として、甘口味噌の中でも塩味が立っているものを「中辛味噌」と分けることもあるといいます。

明確な基準はありませんが、塩分濃度10%前後で、麹の歩合が高いものが中辛味噌の目安です。

最近では、麹を多く使用した甘めの味噌が好まれる傾向があります。
甘い味噌は、ディップなどそのまま口にしてもちょうどいい塩分が魅力。
一方、塩分濃度の濃い辛口味噌は、料理の味が引き締まって味が決まりやすくなるため、調理に使うのがおすすめです。

味噌の色の違いはどうして生まれる?

味噌の色にはさまざまなものがありますが、一般的には3種類で分類します。
淡いクリーム色をした「白味噌」、黄色みが強い「淡色味噌」、赤みが強い「赤味噌」です。

白味噌・淡色味噌・赤味噌

左から、白味噌、淡色味噌、赤味噌

色の違いは熟成期間によって生まれ、基本的には、熟成期間が短いものは白色、長くなるにつれて、黄色、赤色へと変化していき、1年以上熟成されたものは焦茶色に近くなるものもあります。

色の違いによる風味の傾向としては、色が薄い程あっさりしていて、濃くなればなる程味噌特有の香りやコクを感じるようになります。

ここで注意したいのが、色と塩分濃度は関係ないということ。
色の濃い味噌は見た目のイメージから塩分が高いと思われがちですが、必ずしもそうではありません。
一見甘そうな淡い色の白味噌の中にも、塩分が高めの味噌はあります。

自分好みの味噌を選ぶポイント

味噌にはさまざまな種類があるので、選ぶのに悩んでしまう人も少なくないと思います。
そんなときに参考にしてほしいのが、パッケージにある原材料表示。
中でも、次の2つの項目に注目してください。

塩分相当量

ほとんどの場合、100gあたりの塩分濃度が明記されています。
一般的な味噌の食塩相当量は、10〜12g程です。

食塩相当量が10gを切っていたら甘め、11〜12gでしたら辛めになります。
10g程度でしたら、先程の中辛味噌と考えていいと思います。

原材料名

大豆・麹・塩で作られている味噌は、パッケージの原材料名にもその3つが明記されています。

麹にあたる部分は、米味噌なら米、麦味噌なら麦と書いてありますが、豆味噌の場合は原料も麹も大豆になるため、原材料には大豆と塩しか書いてありません。

原材料の表示は、配合量の多い順に並んでいるのが基本。
「大豆」と「米、麦」のどちらが先に書かれているかによって、味の傾向がわかります。
大豆より米や麦が先に記載されていたら、大豆より麹の量が多いので、甘めの味噌といえます。

また、商品によっては「麹歩合」が書かれていることも。
麹歩合とは、含まれている麹の割合を示すもので、大豆と麹が1:1の同量を基準とし、その状態を「10割」といいます。

大豆の1.5倍の麹が入っていたら「15割」、大豆の2倍の麹であれば「20割」と、数字が大きい程甘さが増しますので、甘い味噌を好む方は麹歩合に注目してみるのもおすすめです。

味噌汁

味噌の代表的な銘柄を種類別に紹介

味噌は日本全国で作られており、その土地の歴史や食文化によって種類も味わいも変わってきます。

味噌の代表的な銘柄を、岩木さんにご紹介いただきました。

米味噌

まずは、最も出荷量が多く、味や色の種類が豊富な米味噌の主な銘柄を見ていきます。

信州味噌

日本一の味噌生産量を誇る長野県(※)の信州味噌。
淡色で辛口の印象がありますが、現地では赤色・辛口の味噌も作られているなど、実は幅広い味わいの味噌がそろっています。

※総務省統計局「2022年経済構造実態調査(品目別統計表)

仙台味噌

伊達政宗が日本で初めて味噌を作るための蔵を造ったのが、仙台といわれています。
仙台味噌は麹歩合が低く、しっかり熟成させた昔ながらの味わいを守っているのが特徴です。

秋田県、山形県、新潟県の甘めな味噌

東北地方の味噌は色が濃く、塩分濃度も高めなものが多いとされています。
ですが、米処としても有名な秋田県や山形県、そして新潟県の一部地域では、麹歩合が高い甘めの味噌を作っているところがあります。

西京味噌

白味噌の一種で、京都で作られているものを西京味噌といいます。
味噌の中では塩分量が少なく、最も甘いタイプ。
正月のお雑煮をはじめ、京料理には欠かせない味噌です。

麦味噌

続いては、九州地方で主に作られている麦味噌です。

九州麦味噌

九州麦味噌は塩分濃度が低く、麹歩合が高いため、比較的甘い味噌となります。
九州の中でも、鹿児島県はより甘くなる傾向。
温暖な気候であることから、熟成期間が短くて色も淡いベージュが基本です。

瀬戸内麦味噌

瀬戸内海に面する愛媛県・山口県・広島県周辺は、米味噌と麦味噌が交差する地域。
そこで作られているのが瀬戸内麦味噌です。
中でも愛媛県の宇和島では、大豆を使わず、麦麹と塩だけで作られる味噌があります。
大豆を使っていないため、厳密には味噌といえませんが、この地域では古くから瀬戸内麦味噌として定着。
麦麹特有の香りと甘さが特徴です。

豆味噌

愛知県、三重県、岐阜県の東海3県で作られている豆味噌は、名古屋の名物である味噌煮込みうどんや味噌カツで使われていることでもおなじみです。

八丁味噌

東海地方で多く生産されている豆味噌の中で、最も有名なのが八丁味噌です。
八丁味噌とは、愛知県岡崎市にある岡崎城から西へ八丁(約870m)程離れたところに位置する八帖町(はっちょうちょう、旧:八丁村)にある2社で作られていたものが元祖となります。

味噌蔵

味噌は冷凍保存がおすすめ

味噌の保存方法として一番おすすめなのは冷蔵保存ですが、賞味期限内に使いきれないこともあると思います。
そんなときは、冷凍庫で保存するようにしてください。
味噌は塩分が含まれていることから、冷凍庫に入れても凍りません。

発酵調味料である味噌は、冷蔵庫で保存しているあいだも発酵が進み、味や香りが変わってきます。
そのため、賞味期限内であっても使う頻度が少ない場合は、冷凍保存しておくと風味の変化を最小限にとどめることができます。

また、西京味噌のような白味噌は塩分が少なく、賞味期限も短くなっています。
そのため、最初から冷凍で保存するのがおすすめです。

地域によって異なる味噌の味を楽しもう

今回、岩木さんにご紹介いただいた味噌以外にも、全国には数えきれないほどの味噌があります。
その土地の気候や食文化の影響によって、さまざまな味わいがあるのも味噌の魅力。
これまで食べたことのない味噌にチャレンジしてみると、新しいおいしさに出合えるかもしれません。

めいぶつチョイスでは、全国各地でこだわって作られた味噌を現地から直接お届けしています。
さまざまな地方の味噌を食べ比べて、ぜひお気に入りを見つけてください。