鹿肉は、食用の野生鳥獣肉であるジビエの一種
鹿肉は、食用の野生鳥獣肉であるジビエのひとつです。
ジビエには、鹿肉のほかにもイノシシ肉、クマ肉、キジ肉、カモ肉、ウサギ肉などがあります。狩猟文化がある欧米諸国では、古くから食材のひとつとして普及し、主に貴族の料理に使われてきました。
ヨーロッパでの狩猟期間は9月もしくは10月から2月までに限定されています。
家畜動物と違って安定供給が難しく、食べられる季節が限定されるジビエは、今でも特別感のある食材として高級料理店やお祝いの席で使われています。
日本でも、近年になってジビエの流通が拡大し、人気が高まりつつあります。中でも鹿肉は、ジビエ初心者でも食べやすいとして人気です。
鹿肉が注目されている理由
鹿肉などのジビエが日本で注目され始めている背景は、欧米諸国とは少し異なります。
近年、国内では増えすぎた野生鳥獣が農作物を荒らす被害が目立つようになりました。特に鹿による被害は深刻です。
農林水産省が公表した「主要な野生鳥獣による森林被害面積(令和4年度)」によると、森林被害全体の約7割を鹿が占めています。
野生動物が増えた原因には諸説ありますが、農山村から都市部への人口流出によって農山村の少子高齢化・過疎化が進んだ結果、人と動物の棲み分けのバランスが崩れたことが大きな要因と考えられています。
そこで、農林業や生態系に被害を及ぼす鹿をジビエとして流通させ、鹿の数を減らす取り組みが行われるようになりました。さらに、ジビエの流通で農山村の経済効果も期待されています。
鹿肉の味わいや栄養素
鹿肉は、国内ではイノシシと並ぶジビエの定番ですが、こっくりとした脂があるイノシシよりも淡白で野趣あふれる味わいです。肉なのに後味はさっぱりしており、赤身肉の旨みを存分に楽しむことができます。
また、鹿肉は牛肉や豚肉よりも低カロリーで、高たんぱく・低脂質である上、多くの栄養素を含んでいます。
特に、三大栄養素の代謝を助けるビタミン類や、貧血予防に必須の鉄分などの含有量が多く、ダイエット中の人や体を鍛えている人にもおすすめの食材です。
鹿肉と牛肉、豚肉の栄養成分の比較は下記のとおりです。
鹿肉、牛肉、豚肉の栄養成分の比較(可食部100gあたり)
エネルギー (kcal) |
たんぱく質 (g) |
脂質 (g) |
鉄 (mg) |
ビタミンB1 (mg) |
ビタミンB2 (mg) |
ビタミンB6 (mg) |
ビタミンB12 (μg) |
|
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鹿肉 (※1) |
119 | 23.9 | 4.0 | 3.9 | 0.20 | 0.35 | 0.6 | 1.3 |
牛肉 (※2) |
294 | 17.1 | 25.8 | 2.0 | 0.07 | 0.17 | 0.35 | 1.4 |
豚肉 (※3) |
237 | 17.1 | 19.2 | 0.6 | 0.63 | 0.23 | 0.28 | 0.5 |
さらに、脳機能の向上や疲労回復、ストレス軽減に効果的といわれる「アセチルカルニチン」が牛肉の2倍も含まれており、アスリートにも適した食材としてその栄養価が高く評価されています。
日本で流通している鹿肉の種類
日本で主に流通している鹿肉は「エゾシカ」と「ホンシュウジカ」の2種類です。
それぞれ下記のような特徴があります。
エゾシカ
エゾシカは、北海道に生息する鹿です。一時は絶滅寸前まで激減しましたが、現在は爆発的に増加しています。
牛肉を思わせるような赤身の肉で、味、肉質ともに野性味があり、ホンシュウジカより脂が乗っています。フライパンで焼いてもパサパサしづらいので、初めて鹿肉を調理する人におすすめです。
ホンシュウジカ
ホンシュウジカは、本州に生息しています。
エゾシカに比べると脂が少なく、あっさりしていて食べやすいのが特徴。
ただし、肉質が繊細できめ細かく、焼いても脂が出にくいため、エゾシカよりも焼き方にテクニックが必要です。
鹿肉を初めて食べるなら調理済みのホンシュウジカを、ご家庭で調理するならエゾシカをおすすめします。
鹿肉をおいしく食べる方法
ご家庭で鹿肉を調理する際には、どうすればおいしく食べられるのでしょうか。
ポイントは大きく3つあります。
信頼できるオンラインショップや店舗で購入する
おいしい鹿肉を食べるためには、鹿肉を適切に処理している、信頼性の高いオンラインショップや店舗で購入することが大切です。
厚生労働省が2014年に「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を公表し、野生鳥獣の捕獲後の処理方法や調理方法を規定したことで、鹿肉を含むジビエは特有の硬さやにおいがなくなり、ぐっと食べやすくなりました。
しかし、プロでない人が解体した鹿肉や、血抜きなどの処理が適切に行われていない鹿肉は、残念ながら食べにくさを感じる場合があります。
適切な処理がされた鹿肉は、くさみやクセがほとんどなく、調理前に特別な下処理は必要ありません。
必ず信頼性の高いオンラインショップや店舗で購入するようにしてください。
作る料理に合わせて部位を選ぶ
鹿肉は、ロースやモモ、カタ、スネなどの部位に分けて販売されています。
部位によって特徴が異なるため、作りたい料理によって購入する部位を決めるのがおすすめです。
鹿肉のおすすめの部位と、調理法をご紹介します。
鹿肉の部位
ロース
ロースは、鹿一頭から取れる量が少なく、希少な部位です。人気が高い上に高価なため、手軽に入手できません。
ステーキやロースト、カツなど、肉の味をしっかり感じられる調理方法がおすすめです。
モモ
しっかりした肉質の外モモは、竜田揚げや唐揚げにするのがおすすめ。やわらかな内モモは、サイコロステーキやひと口カツ、ステーキ丼に最適です。カツにするときは、筋切りしてから少し叩くことで、さらにやわらかく仕上がります。
通常、鹿のモモ肉は外モモや内モモと明記されずに販売されていますが、肉の断面を見て判断できます。繊維が荒い部分は外モモ、細かい場合は内モモです。
カタ、スネ
カタやスネは、カレーやシチュー、ポトフなどの煮込み料理にするのがおすすめです。肉に対して1%の塩で一晩マリネすると、お肉がぐんとやわらかくなります。運動量の多い部分なので、筋が多くて硬めですが、1時間ほど煮込むとやわらかくなり、鹿肉の旨みを存分に味わえます。煮込むときは強火ではなく、肉の旨みを閉じ込めるよう弱火でコトコトと煮てください。
ミンチ
一般家庭で最も使いやすいのは、鹿肉のさまざまな部位を混ぜ合わせたミンチです。
鹿肉のミンチ6割に、イノシシ肉や豚肉など脂身のあるミンチ4割を加えて、肉の重量に対して1%の塩を入れて混ぜ、形を整えて焼けば、食べやすいハンバーグになります。
鹿肉のミンチは塩を加えるとまとまるので、パン粉などのつなぎは不要です。
また、このミンチミックスを一口サイズのボールにすれば、鍋のつみれやミートボールに。さらに、小さく丸めて200℃のオーブンで数分間焼けば、IKEA風のクリーム煮や具だくさんのスープ、お弁当のおかずなど、さまざまな料理にアレンジできます。
また、ミンチミックスと玉ねぎを2:1の割合で混ぜ合わせて、メンチカツにしてもおいしく食べることができます。混ぜ合わせたら時間を置かず、すぐに成形してパン粉をつけて揚げるのがポイントです。
そのほかにも、タコライスや麻婆豆腐、そぼろご飯など、通常のミンチと同じように幅広く使うことができます。
焼き方と味付けに注意する
鹿肉を焼く場合、熱したフライパンに入れた後すぐに肉を動かすと、旨みたっぷりの水分が出てきて、パサパサのお肉になってしまいます。
焼き色も付きにくくなるので、使う部位にかかわらず、焼き始めたらしばらく動かさないようにしてください。
また、質の良い鹿肉はシンプルな調理法で肉そのものの味を楽しむのがおすすめです。タレの味に負けてしまうともったいないので、焼肉のたれなどの味が強い調味料は避けたほうが無難です。
ハーブやニンニクなどといっしょにオリーブオイルやグレープシードオイルに一晩漬け込んでから焼くと、乾燥を防ぎながら色よく焼き上げることができます。
上質な鹿肉を取り寄せて自宅で調理してみよう
鹿肉は、ジビエの中でもクセがなく、食べやすいのが特徴です。特に日本の鹿肉は、濃厚なジビエらしさを味わう海外の鹿肉とは一線を画すみずみずしい味わいで、ジビエに苦手意識がある方やジビエ初心者でもおいしく食べられます。
めいぶつチョイスでは、全国の生産者から鹿肉をはじめとするジビエをお届けしています。こだわって育てられた鹿肉を取り寄せて、ご自宅で味わってみてください!
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