和牛の種類にはどういうものがある?品種や主な銘柄牛の特徴を紹介

和牛の種類

和牛は数ある肉の種類の中でも特別感があり、外国人からも「wagyu」と呼ばれるなど、国内外で広く親しまれています。

特に、地域ごとに異なる厳しい基準をクリアした「銘柄牛」は、それぞれ際立った特徴があってブランド性も高く、より贅沢な味わいを楽しめるため人気があります。

ここでは、和牛の品種ごとの違いや、代表的な銘柄牛の特徴をご紹介。ぜひ、好みの銘柄を見つけてみてください。

和牛は全部で4品種

和牛とは牛の品種のことで、定義が厳格に定められています。
和牛と呼ぶことができるのは、次の4品種の牛とそれらの交雑種(※)のみです。

<和牛の品種>


  • 黒毛和種(くろげわしゅ)
  • 褐毛和種(あかげわしゅ)
  • 無角和種(むかくわしゅ)
  • 日本短角種(にほんたんかくしゅ)

現在、市場に出回っている和牛のうち、90%以上は黒毛和種で、一般的に和牛と呼ばれるのもこの黒毛和種を指すことが多いです。

※交雑種…異なる属・種・品種間の交配によって生まれた雑種。牛の場合は、ホルスタインなどの乳用牛(メス)に、黒毛和種などの肉用牛(オス)を掛け合わせたもの。

和牛の品種ごとの特徴

ここでは、和牛と呼ばれる4品種それぞれの特徴を見ていきましょう。

黒毛和種(くろげわしゅ)

黒毛和種(くろげわしゅ)

一般的に和牛と呼ばれる肉は、黒毛和種であることが多いです。
全国で飼育されている170万頭の和牛のほとんどが黒毛和種で、日本を代表する品種といえるでしょう。

黒毛和種は、やわらかい肉質やきめ細かい脂肪に定評があります。

黒毛和種の代表的なブランド牛


  • 松阪牛
  • 神戸ビーフ
  • 前沢牛
  • 但馬牛
  • 近江牛

褐毛和種(あかげわしゅ)

褐毛和種(あかげわしゅ)

褐毛和種は、黒毛和種に次いで多い褐色の牛です。

在来種である南部種に外国種を交配して改良した品種で、脂の含有量が少なく、ヘルシーでまろやかな赤身が特徴です。

褐毛和種の代表的なブランド牛


  • いけだ牛
  • はこだて和牛
  • 紅の牛

無角和種(むかくわしゅ)

無角和種(むかくわしゅ)

山口県を主産地とする、角のない黒色の牛が無角和種です。

黒毛和種に外国種を交配して改良した品種で、赤身が豊富で高たんぱく・低カロリーであるため、健康や美容の面でも注目を集めています。

産地が限られるため頭数が少なく、明確なブランドはありません。

日本短角種(にほんたんかくしゅ)

日本短角種(にほんたんかくしゅ)

日本短角種は、東北地方北部で飼われていた在来牛に国産種を交配して改良した品種で、こちらも希少な牛肉です。

黒毛和種にはサシ(霜降り)が入っている一方、短角種は低脂肪で、旨味成分であるグルタミン酸やイノシン酸を豊富に含むという特徴があります。
さらに、肉質はやわらかく、赤身が多いです。

日本短角種の代表的なブランド牛


  • いわて短角和牛

和牛と国産牛の違い

和牛と混同されがちな国産牛ですが、この2つには明確な違いがあります。

国産牛とは、国外での飼育期間よりも日本での飼育期間のほうが長い牛のことを指します。
つまり、生まれが外国でも、飼育期間の長さによっては国産牛と呼ぶことができるのです。

一方、和牛は日本の在来種をもとに作られた牛のことで、品種を指す言葉。和牛と呼ばれる品種が、必ずしも国産牛であるとは限りません。

なお、日本国内で食べられる牛肉の約60%は輸入牛肉で、約40%が国産牛となっています。
さらに、国産牛は和牛(肉専用種)とそれ以外(乳用種、交雑種)の品種に大きく分けられ、和牛は全体の約4割を占めています。

和牛の代表的な銘柄牛(ブランド牛)とその特徴

銘柄牛(ブランド牛)になれるのは、品種や枝肉(※1)の格付け、飼育方法など、公益社団法人日本食肉格付協会が定義した一定の条件をクリアした和牛となります。

銘柄牛は全国に320種類あり、その中からさらに厳正な審査に基づいて、農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度(※2)」に登録されたものは、2021年10月17日現在で次の10品種です。

※1 枝肉…牛の頭部や内蔵、尾、四肢の先端を除いた部分の骨がついたままの肉のこと。
※2 地理的表示(GI)保護制度…その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度。

但馬牛(たじまぎゅう):兵庫県内

厳しい基準をクリアした兵庫県産の牛。
皮下脂肪が少なく、良質な筋繊維を持ち、赤身と脂のバランスが絶妙と高く評価されています。

神戸ビーフ(こうべびーふ):兵庫県内

神戸ビーフ(こうべびーふ):兵庫県内

厳しい基準の但馬牛のうち、さらに基準を増やした厳格な審査に合格した牛。やわらかく、口の中で溶けるような食感が特徴です。
筋肉の鮮紅色と脂肪の白色が鮮やかな、最高級の霜降り肉と呼ばれています。

特産松阪牛(とくさんまつさかうし):2004年11月1日現在の松阪市を中心とする22市町村

松阪牛の中でも、兵庫県で生まれた12ヵ月齢の雌の子牛を導入し、900日以上肥育した牛。
きめの細かいサシ(霜降り)と、まろやかな脂の旨味が特徴で、血圧や悪玉コレステロール値の減少が期待できる不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。

米沢牛(よねざわぎゅう):山形県置賜地方

黒毛和種で未経産の雌牛のうち、生後月齢32ヵ月以上のもので、肉質等級は3等級以上(※1)の外観、肉質、脂質が優れていることなど、一定の条件を満たした牛。
赤身と脂身のバランスが良く、上質な旨味が特徴です。

前沢牛(まえさわぎゅう):岩手県奥州市前沢区

岩手県奥州市前沢区で肥育された黒毛和種の和牛。肉質等級が4等級以上で、歩留等級がAまたはB(※1)であることなど、一定の規格を満たした牛だけが呼称を許されています。
甘味と濃厚な旨味が特徴で、しっとりしていてやわらかな肉質に定評があります。

宮崎牛(みやざきぎゅう):宮崎県内

最長飼養地が宮崎県の黒毛和種のうち、肉質等級が5等級、および4等級であることなど、一定の規格を満たした牛。
極上の肉質で、口の中でほのかな甘味と芳醇な香りが口の中に広がります。

近江牛(おうみぎゅう):滋賀県内

近江牛は、滋賀県内で最も長く飼育された黒毛和牛で、400年以上の歴史を持つ国内最古のブランド牛といわれています。
霜降り度合いの高さや芳醇な香り、やわらかい肉質が高く評価されています。

鹿児島黒牛(かごしまくろうし):鹿児島県内

鹿児島県における飼養期間が最長で、鹿児島県を最終飼養地とする黒毛和種の牛。
「和牛のオリンピック」ともいわれる、2022年に行われた「第12回全国和牛能力共進会」では、全9部門のうち6部門で1位(農林水産大臣賞)を獲得するなど、和牛の中でもトップクラスの評価を誇ります。
サシがきめ細かくてやわらかく、口の中で溶けるような食感ながら、しっかりとした肉と脂の旨味を感じられます。

くまもとあか牛(くまもとあかうし):熊本県

阿蘇、矢部および球磨地方で飼われていた在来種と、シンメンタール種(スイス・シンメンタール地方原産の牛)の交配によって改良された固有種。
赤身が豊富で、脂肪分は控えめ。コレステロールや中性脂肪を減らす働きが期待できるタウリンが多く含まれているのが特徴です。

比婆牛(ひばぎゅう):広島県

比婆牛(ひばぎゅう):広島県

日本最古の蔓牛(つるうし)(※2)のひとつ「岩倉蔓(いわくらづる)」をルーツに持ち、肉質等級が3等級以上であることなど、一定の規格を満たした牛が認証されます。
育成される頭数が少なく、希少価値が高いといわれています。
脂と赤身のバランスが良く、悪玉コレステロールの抑制につながるオレイン酸が多く含まれており、口溶けが良くなめらかな食感が特徴。

※1 肉の等級は、公益社団法人日本食肉格付協会が定める等級に準ずる。
※2 中国地方で改良された、特にすぐれた和牛の系統群のこと。

肉の格付けの読み方

肉の格付け

「A5ランク」のように、肉の格付け等級を目にしたことのある方は多いのではないでしょうか。
この等級は、公益社団法人日本食肉格付協会が定めたもので、和牛の場合はアルファベットの「A~C」と、数字の「1~5」の組み合わせで表されます。

等級を正しく理解することで、その肉がどのように評価されているのかがわかります。
「A~C」と「1~5」がそれぞれどのような等級を表すのかを見ていきましょう。

歩留等級:A~C

肉の等級のうち、A・B・Cのアルファベットは、1頭の牛から取れる枝肉の割合を評価したもの。
Aに近づくほど、1頭の牛から多くの肉が取れて、市場へ安定した供給が望まれるものとされます。

この等級からは市場に提供できている肉の量がわかり、生産牛としての市場価値を測ることができます。

肉質等級:1~5

1~5の数字は肉質の等級を表し、5に近いほど肉質の評価は高くなります。

肉質等級は「脂肪交雑(サシ)」「肉の色沢」「肉の締まりおよびきめ」「脂肪の色沢と質」の4つの項目で評価され、その中で最も低い数値から等級が決まります。

牛肉の格付け規格

牛肉の格付け規格

最高ランクは「A5」となり、全国の格付けられた和牛の3割弱(2023年現在)がこの等級となっています。

和牛の品種を知って、好みの牛肉を探してみよう!

和牛は、時間をかけて品種改良されてきた上質な牛肉です。和牛には多くの品種がありますが、おすすめの調理方法も品種によって変わってきます。
さまざまな牛肉を試して、お気に入りの銘柄を見つけてみてはいかがでしょうか。

めいぶつチョイスでは、北海道別海町産の黒毛和牛「別海和牛」や、2022年の「全国和牛能力共進会」で内閣総理大臣賞を受賞した黒毛和牛「おおいた豊後牛」など、全国各地の生産者が愛情深く育てたブランド牛をお買い求めいただけます。ぜひチェックしてみてください。